5/16/2011

「東海地震発生確率 30年以内に87%」の解釈は合っているのか?

とても勘違いが多い。地震はサイコロを振ったときの目の出方の予想とは異なる。東海地震が将来30年間に起きる確率が87%という場合、複数の札の中から毎年1回30年にわたり引いたときに、当たりの札を最後まで引かない確率が13%だ、と考えるのは間違いだ。なぜなら、このモデルで考えれば、1年後でも5年後でも10年後でも、その後30年内の発生確率は87%のままだ。どの1年を切り取っても、地震の発生確率はと6.6%にしかならないということになる。

地震はそのメカニズムから、前回発生してからの年数によって発生の危険性が増すもので、その発生は震源地ごとに周期的だ。なので、その発生の可能性は、時間軸を横にとってFig.1のようになるはずだ。これは、ティーグラウンドから一人のプロ・ゴルファーがボールを同じクラブで同じように打ったときに、飛距離がどのように分散するかを観測したときと似ている。いつ地震が発生するかは、打ったボールの中にたったひとつ印の付いているボールをティーグランドから順番に確かめて見つけることと同じだ。


ここで重要なのは、地震は100%起きるということだ。ゴルフボールの例で言うと、ボールの飛距離には限界があって、そこに達するまでに印のついたボールは必ず見つかる。

さて、Fig 2を見ていただきたい。現在をt0とすると、過去に地震が起きてからt0までに次の地震の起きた可能性はあったとしても、起きていないのだからそれは将来の可能性には影響がない。つまり将来ある時期txまでに地震の起こる可能性は、
A ÷ (A+B) × 100 %
である。txを30年後としたのが「確率87%」の意味するところだ。当然だが、txを小さくとるほど、発生確率は低くなる。

Fig. 2の例では発生可能性のピークは今よりも将来のほうが高いことになる。しかしFig.3のように、t0がこの発生可能性のピークよりも後だった場合、地震の危険性はむしろ今のほうが将来よりも高い。

わかるだろうか? t0の時点で1年以内に発生する確率のほうがその後の1年に発生する確率より高いのだ。

そして、分母の(A+B)はどんどん小さくなり、どんなにtxを短くとっても発生確率は100%に近づくことになる。

ここまでを理解すると、竹中平蔵氏のこのツイート:

30年で大地震の確率は87%・・浜岡停止の最大の理由だ。確率計算のプロセスは不明だが、あえて単純計算すると、この1年で起こる確率は2.9%、この一カ月の確率は0.2%だ。原発停止の様々な社会経済的コストを試算するために1カ月かけても、その間に地震が起こる確率は極めて低いはずだ。


と、それを批判する多田光宏氏のブログ記事:

竹中平蔵氏のための確率論入門

は、ちょっと滑稽である。というか、t0がどこに置かれているのか議論していない点で、危機への認識が全く甘い。今後30年間は、明日より今日の方が地震発生のリスクが高いかもしれないのだ。