4/28/2011

金を集めてから商売を考える

ホリエモンがいよいよ収監となる事態にあたって、Twitterにつぶやいたことなどをちょっとまとめてみる。

ライブドア事件、霞ヶ関との繋がりのある企業とない企業ととの間で、処罰の不公平感を感じずにはいられないが、実業がないままにあれよあれよと金をぶん回すようになっていった過程は目にあまるところがあった。ライブドアがまだオン・ザ・エッジだった頃から、プレスリリースをこまめに打つ会社だな、と思っていた。確かEudora Proの販売権を獲得したり、売れそうではないけれどよく名の知れた商品を手中に入れていった。Lindowsもそうだ。旧「ライブドア」も商売として破綻してたプロバイダーだった。

とにかく、名前は通っているけど売れてなさそうな商品、どうやって儲けるのかわからないサービス群が揃っていたので、会社としてやっていけてるのか不思議だったが、秘密は株のテクニックにあった。株価は期待値で膨らむものなので、ニッポン放送を買収しようとしたとき、いよいよバブルではなく、本当に儲かるビジネスの「実」の部分が欲しくてしょうがないのだな、と思った。

ライブドアの成長の手法は「金を集めてから実際の商売を整える」という感じに見えた。当時「なるほどなー、確かに金がなければ大きな商売はできないもんな」と感心した。それにしても、特に何もイノベーションがないウェブ制作会社にしては異様な成長ぶりだった。このときの日本の投資家の金の出し方に疑問を持った。アメリカでは金はなくてもユニーク技術やアイディアに投資がされるが、オン・ザ・エッヂにそんなユニークさはなかった。結局、日本の投資家は勝ち馬に乗ろうとする心理だけで金を動かしている印象が大きい。事業の中身なんか関係ない。ホリエモンはそのあたりをよくわかってたんだろう。

ホリエモンはその成功を今も引きずっているように見える。収入は激減してるであろうが今も六本木の高級マンションに住み、Twitterやメルマガで宇宙開発の夢を語るのは、周囲の期待感を金に変えていこうというオン・ザ・エッジ時代と全く同じ手法だ。実情はメール・マガジンや自著の売上でなんとか回しているんだろう。あまり筋の良さそうでないビジネスにも手を染めている。ホリエモンは投資家にとっては株価を吊り上げてくれる装置でしかない。所詮その役割としての「存在」なので、その装置が既存の本物の利権を奪いにかかると、突如国を挙げて潰しにかかる。しかし旧来の利権に属する企業は、同じような不祥事があっても国を挙げて守るのだから、ゆがんだ社会構造である。

ホリエモンがインタビューで「ベンチャーなんてどれも似たようなもんで、どこかいかがわしい部分がある」と言っていたが、そのとおりだろう。社会は「コンプライアンス」を歪めた形で解釈し、新興企業つぶしに悪用してはいまいか。コンプライアンスは本来、霞が関と癒着のある既得権益に対して適用されるべきものだと思うが、逆になっているように思う。

4/13/2011

男鹿半島周辺の不思議な地震

何を暗示しているんだろう。東北地方太平洋沖地震はM.9.0の超巨大地震だったが、その破断面からはるか遠くで大きな地震が起きている。秋田男鹿半島周辺と長野だ。この中で私は男鹿半島周辺の地震が気になってしょうがない。それは、男鹿半島が日本海に突き出しているからだ。

地形には意味がある。ちょこんと日本海に突き出している場所で、太平洋側の超大型逆断層型地震のあとに正断層型の地震が起きている。何かその地形を作った根本的な要因に関連がありそうではないか。

実は、男鹿半島は日本海に浮かぶ火山島だ。たまたま陸地と繋がっている。日本海には本州側と一定の距離で島が並んでいる。佐渡、能登、隠岐、玄界灘の小島などだ。これらのうちいくつかで重要な火山岩が産出する。「アルカリ玄武岩」だ。

岩石が熔けてマグマになるには3つほどのファクターがある。温度、圧力、そして水。温度が上がれが当然岩石は熔ける。同じ温度でも圧力が下がればやはり岩石は熔ける。水は岩石の融点を下げる。

岩石の温度を上げるのは岩石中の放射性物質と地球のより深いところから上がってくる熱も要因のひとつだ。(プルームと言う地球深部からの熱上昇が主要因とされているのかな。) 圧力は上部マントルのテクトニックな構造、つまりプレートの動きやぶつかり合いで変化する。水はプレート境界で沈み込んだ岩石から供給される。

日本の地下では太平洋側からたっぷりと水成分を"含んだ"岩石が沈み込んでおり、ある程度の深さに達すると陸側のマントルにそれが供給される。陸側のマントルでは岩石が部分的に熔融して上昇し、比較的地表近くの地下にマグマ溜まりを形成する。マグマはここでゆっくりと冷やされるうちに晶出する鉱物によって成分を変化させる。何らかの圧力的な要素が加わって地上に噴出するのが火山噴火だ。

マグマ溜まりでよく分化や混合が進むので、日本には安山岩質、花崗岩質の火山が多い。分化が進まないうちに噴火すると玄武岩質のマグマが出てくる。東京のそばでは富士山や伊豆諸島が玄武岩だ。

しかし、日本海に並ぶ島々に出ているアルカリ玄武岩はちょっと毛色が違う。アルカリ岩と分類されるマグマは、海洋プレートや30kmとか50kmのという非常に深い場所で生成される。日本海側に見られるアルカリ玄武岩は、分化のまったく進んでいない状態で地下深いところから一気に上がってくる。「一気に」というのは相当の勢いをもってということだ。そのため、そのマグマの通り道にある岩石を削りながら熔かさずに巻き込みながら数十kmを駆け上がって噴出する。そのため、冷えて固まるとマグマの中に地下で削ってきた岩石のかけらがそのまま含まれているのだ。

これは激烈な現象だ。なんでそんな激烈な現象の跡が日本海にあるのか不思議だったのだが、今回の男鹿半島周辺の地震ではっとした。日本列島は通常太平洋側からの強烈な押しの応力に支配されている。ところが太平洋側の広い範囲で開放されると、今度は逆に引きの応力が広範囲に働くのだそうだ。これが正断層を生む。引きの応力にはむらがあり、男鹿半島には力が集中したものと思われる。

男鹿半島周辺で発生している地震の震源は浅い。しかし、応力変化は深い部分にも及んでいるのではなかろうか。深い部分での圧力開放はアルカリ玄武岩質マグマを生むきっかけとなりそうだ。

男鹿半島でアルカリ玄武岩が最後に噴出したのは6万年も前のことらしい。しかし、アルカリ玄武岩の噴出が稀なことならば、1000年に一度とも言われるM9.0の地震が、さらに稀な現象を誘発させないとは言い切れないのだと思う。最近の研究でも地震と火山噴火との密接な関係が明らかにされてきている。太平洋沖の地震が男鹿半島周辺の地震を引き起こした、ということは男鹿半島の地形を構成する火山が太平洋沖の地震と関連性があるという可能性は十分考えられる。